心理的安全性

これからの時代は、少ない人数でより効率よくサービスを提供していかなければいけない時代です。

そのためには、変化していくためのアイデア発想が必要で、昔からのやり方に固執しないことが重要です!見聞きするだけでも、身の回りでは色々な変化がありますよね?

例えば!

  • 音声入力で記録をする
  • 電子サインを導入している
  • 介護カメラで見守りする
  • 訪問先・支援先で記録を作成する
  • インカムで情報共有する

などですね。このような変化から、私たちの業務はより生産性が高くなり、時代にあった働き方になっていくのだと思います!

しかし、言うのは簡単だけどこれってかなり難しい…

なぜなら、複数の人で成り立つ組織で実現しなければいけないから!

どう難しいかというと…

  • 批判されたと思われたくなくて注意できない
  • 意見を言うと否定される
  • 「そんなことも知らないの?」と言われる
  • お局様が怖くて思ったことが言えない

こういうことが日常に溢れているからです。心当たりがある方も多いのではないでしょうか?

こんな思いが日常的にある場所で、変化していくためのアイデアや発想なんて意見できないですよね??

結果、多くの事業所は変化しない仕事をやり続けることになり、事業が衰退していきます。

この状態を、心理的安全性が低いと言います。

今日はこの「心理的安全性」というワードについて学んでいきます。

主にリーダーや管理職に向けられることが多い内容ですが、誰もが組織の一員なので、みんなが理解しておくことは重要です!さらに、とりさん的には対人援助スキルの一つとしても考えることができるなと思っているので、ぜひ最後まで学び切っていきましょう!

心理的安全性とは?

心理的安全性とは、組織の中で自分の考えや気持ちを誰に対してでも安心して発言できる状態のことです。

組織行動学を研究するエドモンドソンが1999年に提唱した心理学用語で、もう少し具体的に表現すると「チームの他のメンバーが自分の発言を拒絶したり、罰したりしないと確信できる状態」のことです。

先ほど例に挙げた

  • 批判されたと思われたくなくて注意できない
  • 意見を言うと否定される
  • 「そんなことも知らないの?」と言われる
  • お局様が怖くて思ったことが言えない

こういう心配がない状態のことなんですね。

Google社が「生産性が高いチームは心理的安全性が高い」という研究結果を発表したことから、近年注目を浴びている考え方です。

福祉業界においても「生産性の向上」がテーマとしてあげられていますが、ハード面にばかり目が行きがちだなと思っています。介護ロボットやICT化などですね。

ただ、ロボットを扱うのは人間ですし、この業界はマンパワーに頼るところが絶対に残ります。組織(チーム)で関わる以上、いくらハード面を改善していっても本質的な課題は解決されません…。

最終的には人間関係が基礎となるソフト面の成長が必須になると私は思っています。

ハード面とは違い、ソフト面の改善には時間がかかりますが、力を発揮するときはとてつもない効果を出すものです。ソフト面の強化に心理的安全性が強く作用しています。

心理的安全性が高まるとどうなるのか?

心理的安全性が高まっていくと、以下のような効果が見られます!

パフォーマンスが向上し、業績や成果につながる。
コミュニケーションが活発になる。
エンゲージメントが高まる。

※エンゲージメントとは、目標達成に向けて積極的に取り組んでいるかという指標です。

一言で言うと、やりがいのある仕事ができるようになるということです!
あなたも「こんなチームがあったらなぁ」と一度は考えたことがあるのではないでしょうか。

心理的安全性はどのように損なわれていくのか、知っておく必要があります。

4つの心理的安全性を損なう要因と特徴的な行動

(1)無知だと思われる不安

質問や確認をすると「こんなことも知らないのかと思われないか」と不安になり、その結果、気付きや疑問をそのままにするようになります。

直接的な表現をされなくても、上司に質問したときに小さなため息をつかれたり、鼻で笑われたりした経験などがきっかけで不安を感じることがあります。

(2)無能だと思われる不安

ミスや失敗に対して「仕事ができないと思われるかも」と不安になり、自分の失敗や弱点を素直に認められなかったり、ミスを報告しなかったりするようになります。

ミスや失敗から執拗に注意されたり、存在を否定するようなことを言われた経験も影響することがあります。

(3)邪魔をしていると思われる不安

自分が発言することで「筋違いな話しをして邪魔をしていると思われないか」不安になり、提案や発言をしなくなっていきます。

「空気を読めない」という風に思われることって怖いですよね…

(4)批判的だと思われる不安

改善を提案したくても「他の人の意見を批判していると否定的に捉えられるのでは」と不安になり、現状の批判をしなくなったり、意見があっても言わなくなったりします。

何か言われると敵対してくる人っていますよね…またそういう場面を見たりすることで萎縮し、意見を伝えられなくなってしまいます。

どのように実現するのか

心理的安全性がどのような要因で阻害されてしまうのか、前段で理解していただけたのかなと思います。

では、実際に現場でどのようなことを意識すれば、心理的安全性は高まっていくのか。そのプロセスを理解しておきましょう!

土台を作る

ミスは個人に由来するものではなく、仕組みの問題であることを理解する必要があります。ミスが全て個人に由来していると考えると怖くて行動できなくなってしまいますよね?

なので、起こるミスは仕組みの問題であるというマインドを構築をしていく必要があります。

ミスを無くすこと、仕組みを考えること…それら改善の全ては、入居者の安心で幸せな生活を実現することが目的であると認識しなくてはいけません。

ミスの指摘は個人を責めるものではなく、上記の目的のためにやっているのだと

参加を求める。

伝え方を工夫することで、目的に対して参加を促すことができます。

例えば「今週ミスした場面を見ましたか?」と聞かれるとなかなか答えられないですよね。人の指摘をするのは相手に嫌な思いをさせるのではという心理が働きますし、自分のミスを告げるのは能力がないと思われるかもしれないという心理が働きます。

なので聞き方を変えてみます。「今月、あなたが担当した利用者は安心で幸せな生活を送れましたか?」聞くとどうでしょう?

指摘の内容が個人のものではなく、利用者の生活のためという視点に変わりませんか?

前向きな目的を具体的に聞かれたときに、聞かれた相手は目的を再認識して、積極的に参加してくれるようになってきます。

生産的に対応する。

報告を聞いたリーダーが感情的に怒りを表出したり、見下すようなことをしてしまってしたら、安全性は消えてしまいます…。

生産的に対応するにはあらゆる報告や気付きに対して感謝し、敬意を払って対応して目的を伝え続けなければいけません。そして、その気付きをもとに、利用者の安心で幸せな生活を考える必要があります。

そして「報告について責任を問わない」という方針も重要で、嫌われるかもしれない等の心配を払拭する必要があります。

こういう意識をもって行動することで、組織の心理的安全性は高まっていきます。

具体的な行動

理屈は理解できたかなと思いますが、大事なのはここから…そう、具体的な行動をしなくては変えていけません。
では具体的に何をしていけば良いのか?ということで、普段の言葉の言い換え集を用意しました!

普段の言葉の言い換えから変化をつけていきましょう!

  1. 〇〇してくれてありがとう
  2. まずやってみて、それから考えよう
  3. やめたほうが良い仕事ってなんだろう?
  4. 名前を呼んで挨拶する

これらが重要な言い換えになります!

1は、対象の出来事を明確に伝えた上でお礼を言うというものです!
ただありがとうと伝えるより、○○してくれてありがとう!と、具体的な成果を言語化して伝えることによって、より感謝の気持ちが伝わり、心理的安全性が作られていきます!

2は、やる前からアレコレ考えるのはやめようということです!想像しうるリスクを盾に、行動しない理由にするのはやめましょう!

3は、減らす努力をするということです。新しいことをするには、時間を作らなければいけません。
時間が気合いでは増えません…今までやっていた何かを捨てて、新しいことに取り組んでいくのです。

4は、個別性を重んじる行動です!ただ挨拶をするのではなく、その人個人に焦点を当てた挨拶が相手に安心感を与え、心理的安全性の高い関係を築くことができます。

このように、普段から使っている声かけも言い方を変えるだけで心理的安全性を高めることができます。

リーダー的な立ち位置でなくとも、これらを意識するだけで職場の雰囲気が変わってきますので、意識して取り組んでみてください!

対人援助として

わたしたちの対人援助を生業とする仕事では、クライアントに心理的な安全性を感じていただくことは非常に重要ですよね!

福祉業界で似たような表現をすると、「信頼関係を築く」になるんじゃないかと思います。

信頼関係を築く理由としては、その人の困りごとを素直に話してくれないと困るから、ですよね。
何を支援して良いのかわからなくなってしまいますから…

自分に置き換えてもわかると思いますが、人に素直に困りごとを話すには信頼が必要です。

信頼を得るために必要な原則がバイスティックの7原則ですね。

  • 個別化の原則
  • 意図的な感情表出の原則
  • 統制された情緒的関与の原則
  • 受容の原則
  • 非審判的態度の原則
  • 自己決定の原則
  • 秘密保持の原則

ここからは私の独自の解釈になりますが、このバイスティックの7原則と今回の心理的安全性って非常に似通った概念なんじゃないかと思うんですよね。

例えば、個別化の原則は、ご利用者様をかけがえのない個人として捉えるという考え方ですが、この考えを具体的な行動に例えると何だろうって考えてみます。

心理的安全性をもたらす具体的な行動に「名前を呼んで挨拶をする」というのを紹介しましたが、これは正しく個別化の原則を象徴する行動なんだと思うんですよね!

「他でもないあなたに挨拶していますよー!」ということを伝えることで、自分を認識してくれている!と相手が感じることができます。

もう一つ。

統制された情緒的関与の原則は、利用者が否定的な感情表現をした場合でも、介護者は自身の感情をコントロールし冷静に対処することが必要だという原則です。

これは心理的安全性をどのように実現するか?の「生産的に対応する」の項目に似ているなーと思ってて、利用者や家族が何か失敗をしてしまったりしても、「何で言ったとおりにやらないの」と行動を咎めたり、ため息などのがっかりする仕草などを見せたりしてはいけません。感情的な関わりをしてはいけないという共通点があります。

そのような言動や態度を感じ取って、相手は素直な関わりができなくなり、嘘をついたり、報告をしなくなったりしてしまいます。

つまり、心理的安全性という考え方も、福祉における対人援助も、共通していることは「人」ということだと思います。

人間の本質は、組織から見ても、高齢者の支援から見ても同じで、「個人として尊重してもらいたい」「認めてもらいたい」「自分のことを喋りたい」というような欲求を満たされることで安心できるのだと思います。

結局のところ、人間の欲求はみんな大体一緒ってことだと思います。

そう考えると、最終的に辿り着くのは「自分がされて嬉しく感じることをしてあげよう」なんだと私は思います。

概念を学ぶことは重要ですが、自分の行動に落とし込むことが最重要です。概念を学んだら、自分が行動に移せそうなところまで噛み砕いて実践していけると、心理的安全性が獲得できるんじゃないかと思います。

私は「自分がされて嬉しく感じること」が一つの答えでした。

明日からの実践に活かしていきましょう!